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事前調査報告書に記載すべき内容とは

はじめに

建築物・工作物の解体・改修工事を行う際には、工事の規模・請負金額にかかわらず、アスベスト使用の有無を調べる「事前調査」を行う義務がある。そして事前調査を行った際は、2020年改正の大気汚染防止法(大防法)と石綿障害予防規則(石綿則)に基づいて、記録を作成すること、その記録を基にして「事前調査報告書」を作成することが新設されている。本稿では、事前調査報告書の記載事項について、ポイントを抜粋して解説する。

事前調査の記録事項

大防法と石綿則における事前調査の記録事項は以下の表の通りである。

厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質対策課、環境省水・大気環境局大気環境課『建築物等の解体等に係る石綿ばく露防止及び石綿飛散漏えい防止対策徹底マニュアル 令和3年3月(令和4年3月訂正事項を反映)』より

POINT

◎大防法と石綿則で別の記録を作成する必要はない。

◎記録は関係者に事前調査の結果をわかりやすく示すものであり、なおかつ自治体や労働基準監督署による立ち入り検査等において調査が的確であったか検証できるものであることが必要。

◎「事前調査結果報告書」は解体等作業が開始された日から解体工事が終了する日まで、作業関係者や自治体、労働基準監督署がいつでも確認可能な状態にしておかなければならない。

◎「事前調査結果報告書」は、大防法においては解体工事終了後3年間、石綿則においては事前調査を終了した日から3年間保管しなければならない。

各項目に記載する内容について

1 工事の名称と概要

工事の概要については、工事の内容が分かる簡潔な記載でよい。工事の名称から工事の内容が分かる場合は工事の名称と同じ記載で差し支えない。

2 建築物等の概要、構造

建築物等の概要、構造については、以下の情報を記載する。

・鉄筋コンクリート造等の主要構造に関する情報

・階数や延床面積等の規模に関する情報

・建築基準法に規定する防火規制に関する情報

3 作業の対象となる部分、事前調査を行った部分

改修等工事の場合

改修等工事の場合、事前調査の対象は、改修等を行う部分となる。記録では事前調査を行った部分を容易に特定できる方法で記録する必要があり、図面等に表示して記録することが望ましい。

解体工事の場合

解体工事の場合、事前調査の対象は、工事を行う建築物・工作物・船舶の全てとなるため、全ての部分であることを記録すればよい。

目視できない場所であって解体等工事が始まる前には調査できなかった場所があった場合については、解体等工事開始後に確実に調査がなされるよう記録を行う。例として、具体的には以下の部位が考えられる。

・スラブと外壁面間の層間部(層間ふさぎ)

・外壁がプレキャストコンクリート板やカーテンウォールの場合の裏側、それらを取り付けている金物(ファスナー)部

・渡り廊下の建物の接合部分のエキスパンションジョイント

・内装仕上材(グラスウール断熱材、天井ボード、ウレタン吹付けなど)の裏

・厨房の調理台周辺の金属板やシンクの裏側、タイル張りの下地材

・バスルームのタイル張りの下地材、ユニットバスの裏側の成形板、システムキッチンの裏側

4 事前調査の方法

事前調査方法の記録

事前調査には以下のようにさまざまなケースがある。

・書面調査と現地での目視調査(必要に応じて分析調査)を行う場合

・過去の調査結果を確認する場合

・書面で建築物及び工作物の新築工事の着工日やグランドパッキン、ガスケットの設置日を確認する場合

ケースに応じて、どのように調査したかを記録する。

分析調査方法の記録

以下のいずれの方法で実施したかを記録する。

・偏光顕微鏡による定性分析

・位相差・分散顕微鏡及びエックス線回折装置による定性分析

・エックス線回折装置による定性分析及び定量分析

・偏光顕微鏡による定性分析及び定量分析

5 調査結果と判断根拠

アスベスト含有なしと判断するためには、以下のいずれかの方法による必要がある。

・分析調査による方法

・調査対象材料について、製品を特定し、その製品のメーカーによるアスベスト等の使用の有無に関する証明や成分情報等と照合する方法

・調査対象材料について、製品を特定し、その製造年月日が平成18(2006)年9月1日以降(使用禁止が猶予されていた特定の施設で使用するガスケット又はグランドパッキンにあっては、使用禁止となった日以降)であることを確認する方法

記録にはいずれの方法で判断したか、その判断根拠として使用した書類を含めて記録する。アスベスト含有の可能性のある建材について、含有なしと判断した場合は、その同一と考えられる建材範囲ごとに、判断根拠が明確となるよう記録を作成する。

アスベスト含有有無の判断根拠として使用する書類の例

以下の書類などを添付し、石綿含有の有無の判断が適確に実施されたことが説明・検証できるようにしておく。

・石綿(アスベスト)含有建材データベースのプリントアウト

・メーカーの石綿無含有証明資料

・分析結果の報告書

・過去に実施した調査結果

・ガスケット等の製造年月日



調査結果の記録方法

作業者へアスベスト含有建材の使用箇所を的確に伝えられる形式で記録する。具体的には、アスベスト含有の可能性のある建材について、部屋や部位等を特定できるよう明記しつつ、アスベスト含有の有無の判断結果や名称を書面にとりまとめる。

分析調査の結果の記録方法

分析調査によって明らかとなったアスベスト等の種類も記録する。また、ばく露防止措置を講ずる際の参考とするために、アスベスト等の含有率も測定を行っている場合は、含有率も記録する。

分析を行った場合(特に含有なしの場合)は、その根拠を明確にするため、試料採取箇所について、写真、図面への記入、スケッチ又はこれらを組み合わせる等により、試料採取箇所が特定できるように記録を作成する。

なお平面図で表現しづらいものは書面調査で入手した断面図や詳細図等を用いたり、建材の種類別に色分けしたり、アスベスト無含有の範囲についても表示するなど、使用箇所が一層分かりやすく示すことが望ましい。

事前調査報告書の例

当社で作成した事前調査報告書の例を紹介する。

さいごに

建築物・工作物の解体・改修工事を行う際の事前調査報告は義務であり、怠ると罰則を受けることになる。調査や分析、報告書作成を依頼できる企業について理解しておく必要がある。

[参考]

厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質対策課、環境省水・大気環境局大気環境課『建築物等の解体等に係る石綿ばく露防止及び石綿飛散漏えい防止対策徹底マニュアル 令和3年3月(令和4年3月訂正事項を反映)』

Author
アスベスト調査分析株式会社分析 担当 アス研編集部
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