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今後施行される、アスベストに関する法改正

はじめに

2022年4月に事前調査結果報告が義務化され、2023年10月には事前調査者の資格要件が新設された。建築物等の解体・改修工事におけるアスベスト飛散防止を目的とした法改正は順次施行されており、今後も予定されている。本稿では今後施行される法改正の中でも、特に注目すべき内容のものについて解説する。

除じん性能を有する電動工具に関する措置の見直し(2024年4月1日から施行)

2023年8月29日に公布された石綿障害予防規則(石綿則)の一部を改正する省令では、除じん性能を有する電動工具に関する措置の見直しが行われた。この省令は2024年4月1日から施行される。以下は、厚生労働省の基発0829第1号からの抜粋である。

“(1)石綿等の切断等の作業等((2)の作業を除く。)において義務付けられる湿潤化の措置を、石綿等を湿潤な状態のものとすること、除じん性能を有する電動工具を使用することその他の石綿等の粉じんの発散を防止する措置としたこと。また、第13条第3項において、同条第1項に掲げる作業の一部を請負人に請け負わせるときは、当該請負人に対し同項で義務付ける措置を講じなければならない旨を周知させなければならないとしたこと。”

“(2)成形された材料であって石綿等が使用されているもの(石綿含有保温材等を除く。以下「石綿含有成形品」という。)のうち特に石綿等の粉じんが発散しやすいものを切断等の方法により除去する作業及び建築物、工作物又は船舶に用いられた石綿含有仕上げ塗材を電動工具を使用して除去する作業において義務付けられる常時湿潤化の措置を、当該石綿含有成形品を常時湿潤な状態に保つこと、除じん性能を有する電動工具を使用することその他の石綿等の粉じんの発散を防止する措置としたこと。”

厚生労働省 基発0829第1号

ポイント解説

上記を整理すると、以下の図の内容となる。

つまり、石綿等の切断等の作業における粉じん発散防止措置の義務について、これまでは「湿潤化」に限定されていたが、施行後は「除じん性能を有する電動工具の使用」も選択肢に加わる。

現在の石綿則では、除じん性能を有する電動工具の使用等の措置は、湿潤化が著しく困難な場合の努力義務とされている。しかし「建築物の解体・改修等における石綿ばく露防止対策等検討会 報告書」(2023年6月20日公表)において、除じん性能を有する電動工具の使用は、石綿等を湿潤化した場合と同等以上の石綿等の粉じんの発散低減効果があると確認されたことから見直しが行われた。

ただし、切断せずに取り外すことが原則という考え方はこれまでと変わらないと基発0829第1号では強調されている。

“なお、本改正は、電動工具による石綿等の切断等を推奨する趣旨ではなく、石綿則第6条の2第1項に規定されているとおり、石綿等の除去は、石綿等の切断等以外の方法(ボルトや釘等を撤去し、手作業で取り外すこと等)で行う必要があり、これを実施することが技術上困難な場合に限り、石綿等の切断等を行うことが認められているという従来の考え方を変えるものではない。”

厚生労働省 基発0829第1号

工作物の解体等についても有資格者による事前調査を義務付け(2026年1月1日から施行)

2023年1月11日に公布された石綿障害予防規則の一部を改正する省令では、工作物の解体作業等におけるアスベスト事前調査の資格要件の見直しが行われた。この省令は2026年1月1日から施行される。以下は、厚生労働省の基発0112第2号からの抜粋である。

“事業者は、工作物に係る事前調査について、石綿等が使用されているおそれが高い工作物の解体等の作業及び塗料その他の石綿等が使用されているおそれのある材料の除去等の作業については、石綿則第3条第3項各号に規定する場合を除き、適切に当該調査を実施するために必要な知識を有する者として厚生労働大臣が定めるものに行わせることを義務付けたこと。”

厚生労働省 基発0112第2号

ポイント解説

2023年10月以降、「建築物」の解体・改修工事を行う際は、有資格者による事前調査の実施が義務となったが、この省令の施行により2026年1月1日からは「工作物」の解体等工事を行う際も、有資格者による事前調査の実施が義務となる。対象となる工作物は以下の通りである。

1 反応槽

2 加熱炉

3 ボイラー及び圧力容器

4 配管設備(建築物に設ける給水設備、排水設備、換気設備、暖房設備、冷房設備、排煙設備等の建築設備を除く。)

5 焼却設備

6 煙突(建築物に設ける排煙設備等の建築設備を除く。)

7 貯蔵設備(穀物を貯蔵するための設備を除く。)

8 発電設備(太陽光発電設備及び風力発電設備を除く。)

9 変電設備

10 配電設備

11 送電設備(ケーブルを含む。)

12 トンネルの天井板

13 プラットホームの上家

14 遮音壁

15 軽量盛土保護パネル

16 鉄道の駅の地下式構造部分の壁及び天井板

17 観光用エレベーターの昇降路の囲い(建築物であるものを除く。)

さいごに

作業に必要な機器の配備や資格取得に向けた講習の受講には、相応の期間が必要となる。今後施行される省令に向け、アスベストに関わる事業者には早めの準備が求められている。

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アスベスト調査分析株式会社分析 担当 アス研編集部
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