2023年10月法改正のポイント
はじめに
2023年10月1日から、建築物の解体等の作業を行うときにアスベスト使用の有無を調べる「事前調査」について、有資格者が行うことが義務付けられた。本稿では、事前調査に必要な資格などについて解説する。
事前調査を行うために必要な資格
2023年10月1日からアスベスト事前調査(設計図書等による書面調査と、現地での目視調査)を行う人には、下記のいずれかの資格が必要となった。
◎建築物石綿含有建材調査者
◎2023年9月30日までに日本アスベスト調査診断協会に登録された者
資格の種類
建築物石綿含有建材調査者には3種類の資格があり、調査できる範囲が異なる。
◎一般建築物石綿含有建材調査者
一般建築物石綿含有建材調査者に係る講習を修了した者で、全ての建築物の調査を行う資格
◎一戸建て等石綿含有建材調査者
一戸建て住宅および共同住宅の内部に限った調査(共有部分は除く)を行う資格
◎特定建築物石綿含有建材調査者
一般建築物石綿含有建材調査者の講習内容に加えて、実地研修や、口述試験を追加したもので、全ての建築物の調査を行う資格
3種類の資格のうち、「一戸建て等石綿含有建材調査者」は調査できる範囲が限定されているため、注意が必要である。
資格の取得方法
建築物石綿含有建材調査者の資格を取得するには「建築物石綿含有建材調査者講習」を受講し、修了する必要がある。その講習の実施機関は、全国に125機関(2023年10月2日時点)あり、厚生労働省「石綿総合情報ポータルサイト」内にある講習会情報のページで確認できる。
また、その講習を受講するには基本的に実務経験が必要である。主な受講資格は以下の通り。
◎大学において、建築に関する課程を修めて卒業した後、建築に関して2年以上の実務経験を有する者
◎短期大学において、建築に関する課程を修めて卒業した後、建築に関して3年以上の実務経験を有する者
◎高等学校または中等教育学校において、建築に関する課程を修めて卒業した後、建築に関して、7年以上の実務経験を有する者
◎建築に関して11年以上の実務経験を有する者
◎特定化学物質等作業主任者技能講習を修了した者で、建築物石綿含有建材調査に関して5年以上の実務経験を有する者
受講資格はこの他にも規定されている。詳細は、建築物石綿含有建材調査者講習登録規程第7条に記載されている。
分析調査も有資格者による実施を義務付け
書面調査・目視調査でアスベスト含有の有無が明らかにならなかった場合の「分析調査」についても、有資格者が行うことが2023年10月1日より義務付けられた。必要な資格は以下の通りである。
◎厚生労働大臣が定める分析調査講習を受講し、修了考査に合格した者
◎(公社)日本作業環境測定協会の「石綿分析技術の評価事業」でAランク、Bランクの認定分析技術者又は定性分析に係る合格者
◎(一社)日本環境測定分析協会の「アスベスト偏光顕微鏡実技研修(建材定性分析エキスパートコース)修了者」
◎(一社)日本環境測定分析協会に登録されている「建材中のアスベスト定性分析技能試験(技術者対象)合格者」
◎(一社)日本環境測定分析協会に登録されている「アスベスト分析法委員会認定JEMCAインストラクター」
◎(一社)日本繊維状物質研究協会の「石綿の分析精度確保に係るクロスチェック事業」により認定される「建築物及び工作物等の建材中の石綿含有の有無及び程度を判定する分析技術」の合格者
さいごに
資格を持たない人が事前調査・分析調査を行うことは法令違反となる。社内に有資格者がいない場合、外部の有資格者に依頼する必要がある。依頼先の会社が事前調査・分析調査を有資格者が行っているかどうかを確認することも重要である。