H鋼から検体を採取するときの注意点
はじめに
1955年頃から1975年頃までに建設された店舗併用住宅などの鉄骨・鉄筋住宅では、H鋼の表面に吹付けアスベストが使われている場合がある。本稿では、アスベスト含有の有無を分析するための検体をH鋼から採取する際に注意すべきポイントを解説する。
鉄骨面に接着剤を塗布することはまれ
吹付けアスベストによる耐火被覆工事では、鉄骨面に接着剤を塗布することはまれであり、絶乾後のセメント強度と繊維の絡み合いだけで保持されているケースが一般的である。そのため、耐火被覆されたH鋼の梁から検体を採取する際、「採取しやすい」という理由で小口(図の赤部分)から切り取ると、梁の底部が脱落することがある。この小口の採取による切断は、梁底に強度の面で少なからず影響を及ぼす恐れがある。また、採取後の耐火被覆の補修もしにくい。
適切な切り抜き位置
耐火被覆された梁から検体を採取する際は、可能な限り図の青部分から切り抜くことが望ましい。また、この際もできるだけ材料に振動や衝撃を加えないよう配慮しながら作業をすべきである。
さいごに
調査者は検体を採取する際、飛散防止はもちろん、どこから切り抜くか、どのような付着力で保持されているかについても細心の注意を払いたい。
[参考]
厚生労働省『建築物石綿含有建材調査者講習テキスト』